設立趣意書

 西暦2001年1月17日をもって阪神・淡路大震災の発生から6年の節目を迎えました。震災発生直後の1995年2月に都市生活現地救援本部を設置して避難所や仮設住宅でのふつうの人々の暮らしをサポートしてきた私たちは、震災復興の過程で高速道路や港湾や大きな商業ビルが次々と再建されていく中、地域の人々の生活の再興こそが私たちの取り組むべき中心課題であると考え、1997年に現地救援本部を解消し都市生活地域復興センターを設立しました。

 4万8千戸に及ぶ仮設住宅もようやく昨年解消されました。しかし、1月17日前後に公表された多くの復興検証作業が明らかにしているように、依然として私たちの前には多くの困難な課題が立ちふさがっています。4万戸に至らんとする災害復興公営住宅は高齢化率が30%を超え、21世紀中葉の超高齢化社会を皮肉な形で一足はやく先取りしています。また、区画整理事業など復興都市計画の遅れから、この6年の間に住宅や商店の再建をあきらめて地域を去っていかなければならなくなった人が大勢います。さらに失業率の高さは全国最高水準にあります。私たちが震災直後のがれきの中で感じた“復興には最低でも10年かかる”との予感は残念ながらあたっていたといわざるを得ません。

 仮設住宅が解消したいま、“非日常”=“前期復興”の世界はようやく終わろうとしています。地域の人びとの生活の再生を目指した私たちの活動も、恒常的な地域の高齢者福祉の活動へと徐々に転換していきました。仮設住宅や復興住宅では特に高齢者が目立ち、また被災高齢者の困難な状況は一般の高齢者が抱える困難とすそ野でつながっているからです。ここで私たちは「普段できないことが緊急時にできるはずがない」とある人が語っていた言葉を忘れることができません。震災後の6年間の経験を手がかりに、新しい“日常”を地域のたすけあいのしくみとして紡ぎだしていくことが後期復興期の私たちに課せられた課題です。

 私たちの活動の出発点はいうまでもなく阪神・淡路大震災の発生でしたが、はじめから鍛えられた理念や整備された組織があるはずもなく、緊急事態を前に急ごしらえの組織で手探りの活動を続けてきました。ただし、当初から私たちは、仮に社会を担う主体を行政・企業・市民の3つに分けることができるなら、市民の活動と事業を担い発展させるのが自分たちの役目だという意識を漠然と持っていました。数年間の活動を経るうちに、また、震災後の地域社会におけるNPO・NGO活動の高まりの中で、その意識は確信に変わって来ました。

 こうして市民による支え合い・助け合いの地域社会を実現するという目的を意識しつつ、復興センター内のこれまでの活動グループは随意性の高いボランティア活動から、継続性と事業性に重点を置いた福祉ワーカーズコレクティブなど非営利市民事業への脱皮をめざす道を模索し始めました。そして、こうした動きにあわせ、中間支援組織として、またミニ・シンクタンクとしての、センター機能もよりいっそうの充実が求められるようになってきました。

 以上のような趣旨から、私たちは“前期復興”を主目的として市民、生協、農協、農業者、企業などが自主的に設立した都市生活地域復興センターを解消し、より幅広い市民参加による継続性を持った福祉等の市民事業を行い、またそれらの事業を担いうる“ひと”を養成し、地域内外の社会資源との協働によって阪神・淡路大震災からの後期生活復興を推進し、さらに今後の災害時や高齢社会においても安心してくらせるまちのたすけあいのしくみとネットワークを編み上げていくことを目的とし、さらに一段高い責任を地域と社会に追うために、ここに新たに特定非営利活動法人都市生活コミュニティセンターを設立します。

 2001年2月25日

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